2009年7月4日、「先端加速器科学技術推進シンポジウム2009 in 広島 宇宙の謎に挑む 日本の貢献」が、広島国際会議場(広島平和記念公園内)で開催されました。
[質問1]
今月22日に日本では46年ぶりに皆既日食がある。一般の人は,すばる望遠鏡をのぞくことはできないので,肉眼で観測ができる最大の天体ショーだと思う。宇宙に興味を持つ人が増えるよい機会だと思うので,日食の楽しみ方を教えて欲しい。
[回答]
太陽を直接見ると目を痛めますので、可視光だけでなく赤外線も弱める黒いフィルターを通してみてください。国立天文台のホームページにも日食の情報が出ています。
[質問2]
30mの望遠鏡で何を発見しようとしておられますか。
[回答]
ビッグバン後3億年から8億年の時代の銀河が誕生する時期を見ることと、太陽系外惑星を捜すことなどが大きな目的となっています。
[質問3]
スバルは電子レンジのマイクロ波も影響するから近くに住んでいる人に使わないように呼びかけるという話を聞いたのですが本当ですか。
[回答]
デマですね。すばるでは夜食用に山頂に電子レンジがあります。山頂のマイクロ波を観測する電波望遠鏡では電子レンジの使用を自粛しているかもしれませんが、近所(といっても人が住んでいるのは50km以上さき)の人の生活に制限をお願いすることはありません。
[質問4]
次世代の30m級の望遠鏡に関する詳細を教えてください。
[回答]
日本が国際協力で建設を目指している30m望遠鏡TMTは、1.5mの六角形の鏡を492枚敷き詰めて主鏡とします。マウナケア山頂に2018年頃に完成することが期待されています。 ホームページをご覧下さい。
[質問5]
ハッブルなど宇宙からの観測もされていますが,地上からの観測でのメリットは何でしょうか。
[回答]
地上観測は新しい技術を後から付け加えることができますが、宇宙に挙げる望遠鏡では例外を除いて修理ができませんので、確立された古い技術で作る必要があります。また最大の違いはコストです。すばるの建設費は400億円でしたが、ハッブルではこの間のスペースシャトルでの修理ミッションだけで1000億円かかっています。ハッブルは打上から今までにかかった費用が数兆円と言われています。
[質問6]
ビッグバンの3億年後の最初の星を観測するためにはどのような技術が必要となりますか。
[回答]
これらの星は赤方偏移が大きいため赤外線での観測が重要となります。大気が邪魔になるので宇宙空間からの観測が有利ですが、地上の30m望遠鏡に補償光学を装備することでピンポイントの観測ができると,新しい発見があるかもしれません。
[質問7]
星は重いほど,輝いて寿命も短いと聞いたが,じゃあ,太陽はもうすぐなくなるんですか?光っているんじゃなくて燃えているから違うんですか?でも重いですよね。
[回答]
太陽は今46億歳であと50億年ほどは安定に輝きますので,心配しないで下さい。
[質問8]
宇宙空間は膨張し続けている中で,望遠鏡の精度を上げて遠くまで見ることは,いたちごっこではないのか?どんな意味があるのか?
[回答]
膨張には137億年かかっています。毎年宇宙の大きさが大きくなっていますがそれは1年あたり100億分の1程度でしかありません。望遠鏡の性能はこの100年で何万倍にもなりました。そのお陰で宇宙のことが良く分かってきたのです。いたちごっこになるほど宇宙の膨張は速くありません。
[質問9]
7の銀河が見つかりにくいのは「水素ガスがまだ存在していた可能生」との説明でしたが,最遠の星(134億年前?)が見つかっているのはなぜですか?最初の星は,銀河ではなく単体で誕生したのですか。
[回答]
我々が確認した129億年前の銀河より昔の時代の銀河や星は未だ確認できていません。134億年前には最初の星や銀河ができたはずだと理論的に考えられていますが、誰もまだ見ていないのです。単独ではなく、最初の星は原始的な銀河の中で生まれたと考えられています。
[質問10]
対案の大気を通って光が観測されているのを見れば,大気の組成が分かるのではないか。
[回答]
鋭いご指摘ですね。タイタンの大気を分光すると大気組成が分かります。
[質問11]
宇宙が晴れた後,銀河群,銀河,星はどの順で生成されてきたのか
[回答]
小さい構造から次第に大きな構造に発展したと考えられています。
[質問12]
水素ガスが集合するきっかけとなった,ゆらぎは?
[回答]
暗黒物質の密度のゆらぎが成長して、その濃い部分に物質も一緒に集まりやがて自らの重力で収縮するようになったと考えられています。
[質問13]
宇宙のパターン形成の原理は?
[回答]
万物にはゆらぎがありますが、そのゆらぎが成長したという考えです。
[質問14]
宇宙年齢はどうやって137億年と精度よく分かったのか(他の観測は誤差があるが?)
[回答]
宇宙年齢はハッブル定数の測定や球状星団の色等級図と星の進化モデルの比較などから求められてきましたが、誤差20~50%でしか決まっていませんでした。137億年と決まったのは宇宙背景放射異方性観測衛星が、宇宙のマイクロ波のゆらぎのパターンを 極めて精度良く測定し、そのパターンを説明するように膨張宇宙のモデルに登場する5つのパラメータを調整する過程で決まってきたものです。宇宙年齢の決定精度は現在2%程度にまでなったと考えられています。
[質問15]
すばるの補償光学装置で使う変形鏡はどうやって鏡をゆがませているのですか。
[回答]
電圧を変えると伸縮するピエゾ圧電素子(それもバイモルフ型)を188個貼り付けた薄い鏡を毎秒1000回制御して大気のゆらぎを打ち消しています。 詳しくは ホームページをご覧下さい。